ECサイトの構築もWordPressで構わない?WordPressを利用したECのメリット・デメリット
WordPress(ワードプレス)は、世界一の利用率を誇るCMSで、なんと現存するCMSを採用したWebサイトの6割以上がワードプレスで構築されているというデータもあるほどです。実際に、個人の方が運営するブログを始めとして、世界の名だたる大企業のサイトでもワードプレスが採用されている状況で、日本国内で新たに制作されるWebサイトについても、その多くにワードプレスが採用されています。
ワードプレスを多くの方が採用する理由は、使い方が非常に簡単であること以外にも、世界中でプラグインの開発が行われており、機能拡張をしたいときには無数にあるプラグインを導入すれば、大抵のことが実現できる点が大きいのだと思います。そして、ECサイトの構築を考えた場合にも、ワードプレスにカート機能を搭載してくれる「Welcart」というプラグインを使えば、簡単にECサイトを完成させることができます。実際に、弊社でも過去に、「Welcart」を採用したECサイトにたくさん関わってきました。
ただ、注意しておきたいのは、ワードプレスと「Welcart」を組み合わせたECサイトに関しては、これが現状、最良の選択かというとそうではなく、筆者個人的な意見では、ワードプレスを利用してECサイトを立ち上げるのはあまりオススメではないという意見です。ワードプレスを使用すれば、ECサイトの運用コストも削減できますので、さまざまなメリットがあるのも事実です。しかし、デメリット面を考えると、メリット以上の問題が山積みとなってしまうリスクがあるのです。
そこでこの記事では、WordPressを利用したEC立ち上げのメリット・デメリットをご紹介します。
ワードプレスでECサイトを構築するには?
ワードプレスは、もともとブログ構築用のCMSですので、デフォルトの状態ではカート機能などが搭載されていません。つまり、ワードプレスのみではECサイトを構築する事はできないのです。
ただ、冒頭でご紹介しているように、ワードプレスは世界中でプラグインが開発されており、プラグインを導入することによって機能拡張をすることができます。そして、ECサイトを実現するためのカート機能などもプラグインを導入することで搭載が可能です。
ワードプレスにカート機能を追加するためのプラグインについては、以下の2つが有名です。
- ・Woocommerce(ウーコマース)
日本国内では、下で紹介するWelcartの方が有名ですが、世界的に利用されているプラグインは、こちらの「Woocommerce」です。Woocommerceは、海外で開発されたプラグインとなりますが、日本語対応もされていますので、英語がわからない人でも特に困ることなく使用できると思います。ただ、ECサイトの構造が、どちらかというと海外向けになるので、日本国内だけを対象とする場合、Welcartの方が安心だと思います。 - ・Welcart(ウェルカート)
Welcartは、日本国内ではトップシェアを誇る、EC用のプラグインです。カート機能だけでなく、顧客情報や購買データなども一括管理できますので、小規模ECであれば、特に困ることなくサイトの構築・運用が可能だと思います。Welcartは、ECサイトの基本となる部分は無料で構築できますが、ダウンロード販売など、一部有料拡張プラグインを購入し、必要な機能を追加していく必要があります。日本国内の企業が開発していますので、サポートなども受けられる点が特徴です。
ワードプレスを利用して、ECサイトを構築する場合、上記のようなプラグインを導入することでカート機能を搭載します。なお、日本国内のみを対象とするECサイトであれば、決済会社との兼ね合いがありますので、基本的にWelcartを採用するのがオススメです。
ワードプレスでECサイトを構築するメリット・デメリット
それでは、ワードプレスでECサイトを構築するメリットとデメリットについて解説していきましょう。ここまでの内容を見れば、無料のCMSとプラグインを組み合わせることでECサイトの構築が可能ですし、ユーザーにとっては非常に大きなメリットがあるのではないかと考えてしまいますよね。例えば、大手ECモール(楽天など)にショップを出そうと思えば、ショップ構築のための初期費用はもちろん、出店料や月額の利用料、売上マージンなどがかかってきますので、運用面のコスト負担が非常に大きなものとなってしまいます。
ただ、「ワードプレスはもともとECサイト構築用のシステムではない!」という点から、メリット以上に大きなデメリットが存在するのも確かなのです。ここではワードプレスを利用してECサイトを構築する場合のメリットとデメリットを簡潔にご紹介しておきます。
ワードプレスでECサイトを構築するメリット
それではまず、ECサイトの構築をワードプレスとプラグインを組み合わせて行う場合のメリットから整理しておきましょう。
- ①ワードプレスは使い方が簡単なので、WEBに詳しくない方でも使いやすい
- ②ECサイトとしてだけでなく、ブログ機能もそのまま利用できる(コンテンツマーケティングが同時にできる)
- ③楽天やamazonなどと異なり、月額費用もなく、売上マージンを取られない
- ④機能拡張がプラグインの導入で可能
ワードプレスを利用してECサイトを構築する場合、上記のようなメリットが考えられます。特に、ワードプレスは、誰にでも比較的簡単に操作が可能ですので、社内人員でECサイトを構築し、費用を削減することも不可能ではありません。また、もともとがブログ用のCMSですので、ブログ機能を利用して集客を同時に行うことも可能です。特に、既にワードプレスでサイトを運用している場合、そのサイトにカート機能を追加し、ECサイトにすることができますので、新たなURLにて一から集客を目指すより、早期に売り上げが見込めます。
ワードプレスでECサイトを構築するデメリット
ワードプレスを利用してECサイトを制作する場合、「低コストである」ことや「手軽に制作できる」というのが最大のメリットになるでしょう。ただし、これらのメリットは、あくまでもECサイトが完成するまでに得られるもので、運用面や売上面でのメリットではないという点に注意しておかなければならないでしょう。というのも、ECサイトの制作費がいくら安くなったとしても、売上が上がらないサイトになってしまうと意味がありません。初期コストが高くなっても、バックヤードを含めて運用がしやすいようなシステムを構築する方が、中長期的に見るとメリットが大きいと考えておきましょう。
それでは、ECサイトをワードプレスを利用して制作する場合のデメリットについてご紹介します。主なデメリットは、以下のような問題があげられます。
- ①セキュリティーリスクが高い
- ②プラグインに縛りがあるため、欲しい機能が実現できないケースがある
- ③決済方法の追加に難がある
デメリット面については、それぞれのポイントをもう少し詳しくご紹介しておきます。
■セキュリティーリスクについて
ワードプレスを利用してECサイトを作る場合、最も注意しなければならないのがセキュリティーリスクです。というのも、冒頭でご紹介しているように、ワードプレスは世界中で最も利用されているCMSであるということから、悪意のある攻撃の対象になってしまう可能性が高いのです。実際に、2017年には、世界中のワードプレスを利用したWebサイトが攻撃され、なんと150万件のWebサイトが改ざん被害にあったとされています。
参考:WordPressサイトの改ざん被害は150万件超に 「最悪級の脆弱性」
ワードプレスは、Windowsと同様に、「世界で最も利用されているプラットフォームである」という理由で、世界中の悪意のあるハッカーに狙われやすいという特徴を持っています。現在では、世界的な大企業もワードプレスを使用してWebサイトを作っているなど、攻撃対象となるようなサイトが多いことから、悪意のあるハッカーにとっては、マイナーなCMSを狙うよりも、効率よく攻撃ができるからだと考えられます。
したがって、ECサイトをワードプレスで制作し運営していた場合、知らないうちに改ざんを受けてしまう可能性がどうしても残ります。そして、ECサイト内には、顧客の個人情報などが保存されていることから、こういったデータが流出してしまうと、単なるWebサイトの改ざん被害では収まらず、企業としてもブランディングを棄損し、信用を失ってしまう結果を招いてしまうでしょう。さらに現在では、個人情報の流出に関する罰則は非常に厳しくなっていますので、悪意のある攻撃で個人情報が流出した場合、とんでもないダメージを受けてしまう恐れがあります。
このような経緯があることから、高いセキュリティ基準が求められるような業種のWebサイトでは、あえてワードプレスが候補から外されるような状況になってきています。
■ECの機能が限定されてしまう
ワードプレスとプラグインを組み合わせることでECサイトの構築できるのは、非常に手軽だというメリットがある一方で、EC機能に限界ができてしまうという問題が生じます。例えば、フルスクラッチでECサイトを制作する場合、EC機能だけでなく、配送面などバックヤードのことも考えて、注文から発送までをワンストップで進められるようなシステムを構築することも可能です。
しかし、ワードプレスでECサイトを制作する場合、プラグインにない機能を実装するのは非常に難しいのです。例えば、「AmazonPay」を導入する、定期販売やレンタルECとして運営するなど、最近のECサイトによくある機能でも、それがプラグインの機能にない場合、実装することができないのです。要は、「ワードプレス+プラグイン」という体制でECサイトを実現する場合、EC機能にどうしても縛りができてしまうという訳です。
したがって、これからECサイトの制作を検討中の方は、どのような商品を販売するのか、販売方法はどのようにするのか、搭載したい決済方法は、といったあたりを慎重に検討し、ワードプレスでは実現できないようなら、ECのASPやパッケージなどを検討すべきです。
■決済方法が限られている
ワードプレスで制作したECサイトは、機能面に縛りがあるだけでなく、決済方法が限られてしまう点も大きな障壁となります。
ECサイトにおいては、対応している決済方法の種類が、サイトの集客力を左右する要素となります。しかし、ワードプレスはもともとブログ用のCMSですので、決済機能などありませんし、プラグインを使って導入したいと考えても、そもそもプラグイン対応されていない決済方法なども多く存在します。そして、プラグイン対応がなされていなければ、サイトに実装したくてもできないわけです。
なお、ワードプレスでECサイトを制作する場合でも、銀行振り込みや代引き、カード決済など、ごく一般的な決済方法であればプラグインの機能で対応することが可能です。したがって、小規模ECであれば、特に問題になることもないのですが、多様な決済方法に対応するECサイトを作りたい場合は、ワードプレスはオススメできません。
【番外編】HTML、CSS、PHPの知識が必要
これは社内人員を使ってECサイトを制作・運営する場合の注意点です。ちなみに、ワードプレスに限らず、ECキューブなど、他のシステムを利用する時でも、社内人員でECサイトを制作する場合、ある程度の専門知識が必要になります。
ワードプレスを利用して、ブログを立ち上げる程度であれば、HTMLとCSSの知識がそこまでなくても、ネット検索をしながら制作を進めることはそこまで難しい事ではありません。しかし、これがECサイトの制作になると、ある程度専門的な知識が無いと難しいと考えておきましょう。welcartを利用する場合、専用のテーマが販売されていますので、「知識が無くてもECサイトが作れる」と考えてしまう方もいるのですが、自社の販売方法や商品に適した構造に多少カスタマイズが必要になった時には、何の知識もない状態だとかなり難しい部分があります。
ECサイトで販売トラブルが起きた時には、企業の信用そのものを棄損してしまう恐れがありますので、基本的にサポートサービスが用意されていないワードプレスはリスクが大きいと考えておきましょう。
ワードプレスのメリットが薄れてきている?
上述しているように、ワードプレスを利用してECサイトを作る場合、手軽さが最も大きなメリットになっています。ワードプレスに、welcartというプラグインを導入すれば、その時点で通販サイトとして運用することも可能なほど、簡単にECサイトを作ることができます。ただし、ECサイトのデザイン性や決済方法の追加、販売方法の多様化などを考えると、制作の手間や時間、コストなどはどんどん追加されていくことになります。要は、ある程度本格的なECサイトを構築しようと思えば、ワードプレスでもそこまで手軽な訳ではないということです。
そこで近年注目されているのが、「BASE」や「STORES」などのECシステムのASPです。実は、これらのASPを利用すれば、SNSのアカウント設定並みの簡単さで、誰でも手軽にECサイトを始めることができるようになっているのです。最近では、TVCMなども放送されていますので皆さんも存在自体は知っていると思います。
「BASE」や「STORES」などのECシステムのASPの登場により、ワードプレスに存在していた「手軽にECサイトを始められる」という利点がかなり薄れてきています。これらのASPは、無料でスタートできるうえ、カード決済やコンビニ決済などのシステムも最初から搭載されています。もちろん、売上に応じた手数料は発生しますが、コストが発生するのはサイトで商品が売れた時なので、負担はかなり少ないと思います。
上述しているように、ワードプレスは、EC機能に制限がある事や新しい決済機能に対応するのが難しいなどといったデメリットから、ECサイトは構築できるものの「あくまで小規模ECであれば」という条件が付きます。そして、小規模ECの運営を考えているのであれば、もっと手軽なEC用のASPがあるのですから、わざわざワードプレスを使用するメリットがなくなっているのが現状な訳です。
なお、一日の注文数が、50件や100件を超えるような、中・大規模のECサイトの運営を考えているのであれば、そもそもワードプレスでは機能が足らないと考えておいた方が良いですよ。この場合、モール型サービスにショップを出すとか、中・大規模向けのECプラットフォームを利用するのがオススメです。
ワードプレスは集客用に利用するなら世界最強!?
ここまでの説明を見ると、「ワードプレスって、聞いていたほど便利ではないのかも…なんで世界中で支持されているの?」と疑問に感じてしまった方が多いかもしれませんね。ただ、勘違いしてほしくないのは、ワードプレスは、あくまでもECサイトを構築するためのCMSとしてはオススメできないというだけで、ECサイトを運営する上での集客を考えると、現在でも世界最強のプラットフォームになり得ると考えてください。
上述しているように、そもそもワードプレスというCMSは、誰でも簡単に自分のブログを作ることができるようにと考えられて開発されたものです。そして、現在のSEO対策を考えてみると、「コンテンツ・イズ・キング」といった言葉が作られているように、ユーザーが求めている情報をコンテンツとして提供し、Webサイトに集客するというコンテンツSEOが最も重要となっているのです。実際に、「最近よく聞く『コンテンツSEO』とは?その手法やメリットなどをまとめておきます!」という記事内でもご紹介したように、弊社がサポートを行っている企業様は、コンテンツSEOを開始してから、自然検索でのサイト流入者数が1カ月平均で500%(昨対比)を超えるという結果になっています。
ECサイトを成功に導くためには、やはり自社のサイトに多くの人が訪れてもらわなければいけません。もちろん、リスティング広告など、WEB広告を用いて集客する方法もありますが、さまざまなキーワードで見込み客を獲得したいと考えると、SEO対策を行い、自然検索で上位表示されるようになることが大切なのです。
そして、こういったコンテンツSEOを進めるためのブログを作る場合は、ワードプレスが最も適したCMSになるでしょう。ワードプレスは、Googleの中の人が「WordPress (ワードプレス)がGoogle検索におけるSEOに効果がある」と公言しているようなCMSですので、ワードプレスを用いてECサイトへの流入者を増やすための対策を行うのは非常にオススメです。簡単に言うと、ワードプレスで制作したサイトに内に、販売している商品の特集コンテンツを作り、それを自然検索で上位表示されるように対策を施す。そして、コンテンツは、商品のカートページにリンクするような構造にしておけば、コンバージョン率の高いユーザーをECサイトに流入させることができるようになります。
このように、ワードプレスは、ECサイトそのものを制作するためのCMSとしてはオススメできないのですが、ECサイトの売り上げをより高くしていくためのコンテンツSEOのために併用するには最適だと考えられます。
まとめ
今回は、ECサイトの構築を検討している方に向け、ワードプレスを利用してECサイトを作ることができるのかについて解説してきました。
この記事でご紹介しているように、ワードプレスはもともとブログ用のCMSとして開発されたものですが、プラグインを導入することでEC機能を追加することは問題なく可能です。つまり、ワードプレスを使用してECサイトを構築し、EC事業者として活動することは可能だと考えて構いません。
ただ、ワードプレスは、あくまでもブログを制作することが主眼として開発されているため、ECサイトに欲しい機能がどうしても搭載することができない…など「かゆいところに手が届かないシステム」といった形になるケースも多いです。そのため、ECサイトを構築する場合でも、大規模ECサイトの構築をワードプレスで手掛けるのは、基本的に不可能と考えておおきましょう。さらに最近では、「BASE」や「STORES」など、EC用の優れたASPが登場してきたこともあり、小規模ECサイトの構築でも、ワードプレスを採用するメリットがほとんどないのではないかと思えます。そのため、冒頭で指摘したように、筆者個人的な意見では「ECサイトの構築にワードプレスは向いていない」という認識になるのです。
なお、これをもってしてワードプレスが使えないCMSと判断すべきなのかというとそうではなく、コンテンツSEOを進めていく上では、現在でも世界最強のプラットフォームになるという意見です。特に、ECシステムとして、「BASE」や「STORES」などのASPを採用している場合、SEOの面が非常に弱いという弱点を持っているため、ECサイトへの集客方法を別途考えなければいけません。楽天など、大手ECモールであれば、モール内に広告を出すことで集客が可能なのですが、「BASE」や「STORES」の場合、自然検索もしくはWEB広告による集客がどうしても必要です。そして、ECサイトへの流入を増やすための手段として、別建てでワードプレスのブログを作り、上位表示を目指すという方法がオススメです。