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越境ECとは?立ち上げ前に押さえておくべき法律的な注意点について

今回は、ここ数年急激に注目度が高くなっている『越境EC』の注意点について解説していきたいと思います。『越境EC』は、国境を越えて取引を行う通信販売サイトのことで、もう少しわかりやすく言うと、海外の顧客がインターネットを介して、日本のECサイトで買い物をすることを指します。

スマホやタブレットの普及により、インターネットが非常に身近な存在になっている現在、ECサイトを開設する際に、日本国内に在住する人のみを顧客対象とするだけでなく、外国に在住する人を顧客対象とした方が、より多くの売り上げが見込めると、越境ECの立ち上げを検討する企業が多くなっています。実際に、ここ数年、越境ECの市場規模が急拡大していると言われており、日本国内でも法整備が急がれている所です。

この記事をご覧になっている方の中にも、これから越境ECの立ち上げを考えているという方が多いと思うのですが、日本国内向けのECサイトと同じようなものと考えているのであれば、注意が必要です。というのも、外国を対象とした商取引になりますので、当然、関わってくる法律は日本の物だけではなく、予想もしないトラブルに巻き込まれてしまうリスクが存在します。
そこでこの記事では、近年注目度が高くなっている越境ECについて、実際に立ち上げる前に押さえておきたい法律的な注意点をご紹介していきます。

越境ECの市場規模が拡大している理由は?

それではまず、越境ECの市場規模が拡大傾向にある理由について解説しておきましょう。「越境ECの市場規模が右肩上がりに拡大している!」と言われても、日本国内向けのEC事業者の中には疑いの目を向けてしまう方も多いかもしれませんね。しかし、経済産業省が行った「電子商取引に関する市場調査」では、以下のようなデータが出ています。

令和元年において、日本・米国・中国の3か国間における越境ECの市場規模は、いずれの国の間でも増加しました。なお、中国消費者による日本事業者からの越境EC購入額は1兆6,558億円(前年比7.9%増)、米国事業者からの越境EC購入額は2兆94億円(前年比16.3%増)であり、昨年に引き続き増加しています。
引用:経済産業省「電子商取引に関する市場調査

このように、日本・米国・中国の3か国間を見ただけでも、急速な伸びを見せているのです。それでは、越境ECの市場規模がなぜここまでの伸びを見せているのでしょうか?

日本製商品への高い信頼性

欧米や中国などでは、日本製品への信頼性が非常に高く、「made in japan」という部分だけで大きなブランド価値を持っています。近年では、さまざまな業界で、中国や韓国の製品が目立つようになっていますが、それでも日本製品に対する「品質が良い」というイメージが現在でも根強く残っているのです。

特に、食品や化粧品、ベビー用品に関しては、日本製だというだけで「安全性が高い」というイメージを持たれることになり、品質を重視して商品を購入する層の方から高い人気を誇っています。また近年では、日本のアニメや漫画が世界的な人気を誇るようになっており、アニメ・漫画の関連製品が海外からも高い需要を誇るようになっています。これは、コロナ禍で日本だけでなく諸外国でもステイホーム政策がとられたことで、日本の文化であるアニメ・漫画が海外でも浸透してきたのだと思います。

このように、日本の製品は、安全性が高い、品質が良いというイメージを持たれていることから、越境ECを開設した時に、爆発的に売れる可能性があるわけです。

新型コロナの影響も大きい?

実は、ここ数年における越境ECの市場規模拡大は、新型コロナウイルス問題も影響していると考えられます。どういうことかというと、コロナ禍では、多くの国でロックダウン政策がとられましたし、日本でも海外からの旅行客の受け入れを一時的に停止するなどといった過去に例を見ないほど強い措置が行われました。
コロナ問題が発生する直前までは、積極的に海外からの旅行客受け入れ政策がとられており、特に中国人旅行者の爆買いは日本に大きな利益をもたらせていましたよね。このインバウンド消費が、コロナ禍で一気に消失してしまい、多くの企業がダメージを受けたと言われています。

ただ、日本に旅行に来れなくなった海外の方についても、旅行で訪れた時に手に入れた日本の製品をリーピートしたいという意向を持った方は非常に多かったのです。そして、コロナ禍のステーホーム期間中に、越境ECサイトを見つけ、購入するという流れができたと考えられると言われています。

越境ECで考えられるトラブルとは?

ここまでの解説で分かるように、日本製品が海外から非常に高い評価を受けていることから、越境EC事業を始めることは、大きな売り上げ確保のチャンスがあると考えられます。ただ、海外向けの販売を行う時には、国内向けのECサイト運営では考えられないようなトラブルに陥ってしまうリスクがあると考えておきましょう。

ここでは、越境ECで考えられるいくつかのトラブルをご紹介しておきます。

不正カード利用

これは、国内向けのECサイトでもあり得ますが、越境ECになると対処が非常に難しくなるので注意しましょう。要は、不正なクレジットカードを利用して引き起こされるトラブルです。

例えば、偽造されたクレジットカードで決済されるというケースや、子供が親のクレジットカードを利用して注文するなどといった問題が考えられます。こういったクレジットカードのトラブルに関しては、商品を発送した後に「入金されない…」なんてことに気付いても、相手は海外に在住しているわけですので、商品や代金の回収がほぼ不可能になります。
したがって、越境ECの場合、カード決済時の本人確認がより重要になると考えておきましょう。

損害賠償問題

これは、日本人の常識が全く通用しない問題ですので、本当に気をつけましょう。越境ECを運用する場合、購入者に送付した商品に何らかの問題があると、そのトラブルがもとで、損害賠償起訴にまで発展してしまうリスクがあります。

例えば、送った衣服に針が残っていた、商品が破損していたなどと言ったことで、購入者が怪我をするなどといった問題が発生したとしましょう。もちろん、国内向けのECサイトでもこのような問題があるかもしれませんが、実際に起こったとしても裁判沙汰にまで発展するようなことはほとんどないと言えるでしょう。しかし、諸外国では、こういった問題でも普通に損害賠償起訴を起こされてしまう可能性があるのです。そして、さらに問題なのは、起訴は顧客が住んでいる国で起こされるので、裁判で争う場合には、現地への渡航費や弁護士費用など、信じられないほどの出費を強いられてしまうことが考えられるのです。
こういったリスクを回避するためには、PL保険などに加入しておくといった対策が必要になり、国内向けECサイトの運営では考えなくても良いコストが発生してしまいます。

商品の破損や不着

日本国内でECサイトを運営する場合、送ったはずの商品が途中でどこかに消え、顧客の手元に届かない…や届いたとしても扱いが悪く破損してしまうといったトラブルは非常に少ないです。これは、日本の運送業者の質が諸外国と比較しても、圧倒的に高いためと考えても良いです。

越境ECを運営する場合、送ったはずの商品が届かなかったり、届いたとしても破損しているといったトラブルが一定数起こると言われています。海外への配送は、当然、海外の配送業者が関わることになりますので、日本では考えられないような雑な扱いをされてしまうケースがあるのです。
こういったトラブルが起きやすいということをきちんと理解して、破損しやすい商品などは厳重に梱包したうえで発送しましょう。さらに、追跡番号などを利用して、商品の配送状況をしっかりと確認しておきましょう。

現地での法律違反

最後は、商品の購入者が居住する地域の法律の問題です。当たり前のことですが、日本の法律と外国の法律が異なるので、知らないうちに現地の法律を違反してしまい、トラブルに発展してしまう恐れがあるのです。

越境ECは、少しイメージしにくいのですが、商品の輸出にあたる行為を行うのですが、現地で輸入禁止にされている商品を販売することはできません。例えば、商標権を侵害している、食の安全基準を逸脱しているなど、現地の法律を知らなければ、違反行為を行ってしまう可能性があるわけです。
したがって、越境ECを運営する場合、販売する場所の法律をしっかりとチェックしなければならないと考えておきましょう。

越境ECにおけるトラブルの解決は非常に難しい

上述のように、越境ECを運営する場合、法律も人々の常識も日本人とは全く異なる人と取り引きをすることになることから、「こんなことで裁判する!?」と驚くようなトラブルが発生してしまうこともあります。そして、こういった越境ECにおけるトラブルは、解決が非常に難しくなるということを頭に入れておきましょう。

というのも、取引相手が、基本的に海外に在住しているということから、トラブルが起きた時に、「どこの国で起訴を起こすのか?」という問題が立ちはだかります。例えば、日本国内のECであれば、民事訴訟法により管轄裁判所が判断されることになるのですが、諸外国の場合、それぞれの国の法律に従って、管轄裁判所が決定されてしまいます。当然、起訴を起こすのは、商品を購入した消費者になるわけですので、外国の法律に従って管轄裁判所が決定されてしまうことでしょう。

越境ECサイトなどでは、利用規約に管轄裁判所について「日本を管轄裁判所とする」と記載するケースが多いようですが、こういった記載をしていたとしても、実は法的な強制力はありません。日本の民事起訴法では、

(管轄権に関する合意)
第三条の七 当事者は、合意により、いずれの国の裁判所に訴えを提起することができるかについて定めることができる。
5 将来において生ずる消費者契約に関する紛争を対象とする第一項の合意は、次に掲げる場合に限り、その効力を有する。
一 消費者契約の締結の時において消費者が住所を有していた国の裁判所に訴えを提起することができる旨の合意(その国の裁判所にのみ訴えを提起することができる旨の合意については、次号に掲げる場合を除き、その国以外の国の裁判所にも訴えを提起することを妨げない旨の合意とみなす。)であるとき。
二 消費者が当該合意に基づき合意された国の裁判所に訴えを提起したとき、又は事業者が日本若しくは外国の裁判所に訴えを提起した場合において、消費者が当該合意を援用したとき。
引用:e-Gov|民事起訴法

上記のように、原則として、消費者が契約締結時に住所を有していた場所を管轄地とする合意しか認めていないのです。なお、このほかにも、準拠法について「日本の法律により規律される」などと利用規約に記載しておくケースをよく見かけますが、こういった記載についても法的な強制力はありません。

一般的に、消費者が起訴を起こすと決めた時には、誰でも自分の国で裁判を行いたいと考えるものですから、トラブルを解決するためには、海外で起こされた裁判にに対処しなくてはならなくなり、解決が非常に困難です。

中国電子商取引法(中国EC法)はきちんと押さえておこう

越境ECを立ち上げる場合、有力な顧客対象として中国が入りますので、中国EC法についてはきちんと押さえておくべきでしょう。中国EC法は、基本的に中国国内の不正を防止するために定められた法律です。ただ、中国人を相手にした越境ECを運営する場合、日本の業者にも影響を与える規制が含まれていることから、内容を把握せずにいると、思わぬトラブルに巻き込まれてしまう恐れがあります。

ここでは、中国EC法についても簡単に解説しておきます。

ECプラットフォーム経営者への規制が

中国EC法の大きな特徴は、天猫(Tmall)、京東商城(JD.com)などの大型ECモールサイトを展開するECプラットフォーム経営者に対して、非常に厳しい義務を課している点です。

例えば、消費者の生命や健康に関わる商品やサービスの取扱いについては、ECプラットフォーム経営者が出店者の資質や資格について理解せず、消費者に何らかの損害を与えた場合、プラットフォーム経営者が消費者の安全確保義務を怠ったとみなされ、その責任を負うことになります。
他にも、知的財産を侵害していたり、模倣品の販売を行っている出展者が存在し、それを放置していた場合には、日本円にして約800~3,200万円の制裁金が課せられることになります。これは、悪質な出店者を市場から排除し、消費者を守るための規制なのですが、逆に言えば、これを守れていない場合、大手ECモールへの出店ができません。ちなみに、食品類については、中国語での商品説明が必須となります。

ECプラットフォーム出店者に対する規制

当然のことながら、ECプラットフォーム出店者に対する規制も存在します。ECプラットフォーム出店者に関しては、営業許可証の取得・納税義務などが課せられており、違反者には罰金が科せられます。以下に、出店者に対する主な規制をご紹介しておきます。

  • ・中国法人の登録設立が大前提となる
  • ・営業許可証などの情報をサイト内に明示
  • ・虚偽宣伝、評価の捏造などが禁止
  • ・抱き合わせ販売は注意喚起しなければならない
  • ・個人情報保護法の遵守
  • ・輸出入監督管理等の関連法律・法規の遵守

中国EC法は越境ECビジネスには追い風

中国EC法は、ECプラットフォーム事業者と出店者に対してさまざまな厳しい規制を設けています。実際に、この法律が制定されたことにより、日本製品の中国での売り上げはかなり減少したと言われています。なぜなら、日本に観光に来た中国人旅行者が日本で爆買いした物を、中国のECプラットフォームで転売するという代理購入ビジネスが、中国EC法により難しくなったからですね。上述したように、ECプラットフォームで販売するためには、法人を作り営業許可を取得しなければならないなど、かなりハードルが高くなったわけです。

ただ、この状況は、「日本の物が売れなくなった…」というようなネガティブな状況ではなく、越境EC事業者にとっては大きなチャンスととらえられるでしょう。というのも、代理購入ビジネスが激減したことから、今まではそのルートで購入していた方が、正規ルートで商品を求めるようになり、越境ECでの需要拡大につながるのではないかと予想されているからです。
中国EC法は、日本の事業者に良い影響も考えられますが、それでも中国の消費者とのトラブルなどは依然考えられますので、十分に注意しておきましょう。

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まとめ

今回は、ECサイトの中でも、海外に在住している人を対象とした越境ECの基礎知識を解説してきました。越境ECは、極端な話、顧客対象が世界中の人になるわけですので、国内向けECサイトと比較すると、無限の可能性があると言っても良いでしょう。実際に、コロナ禍で日本に旅行に来ることが難しくなった現在では、外国の方から商品購入の相談が増加し、越境ECサイトの開設を検討している企業が増えていると言われています。

ただ、越境ECサイトは、国内向けのECサイトでは考える必要もなかったtっい点がたくさん生じますので、「越境ECサイトを開設すれば儲かる!」などと簡単に考えない方が良いですよ。この記事では、越境ECでよくあるトラブルや法律的な注意点を簡単にご紹介していますので、ぜひ頭に入れておきましょう。

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